狂犬病予防注射は毎年すべき?安くすませることはできる?【獣医師解説】

狂犬病予防接種は毎年しなくてはいけない?

多くの飼い主が今くらいのシーズンに注射する狂犬病予防接種。
きちんと皆様毎年注射されているでしょうか。
タイトルの「毎年予防すべきか」についてですが、答えは「イエス」です。
なぜなら、狂犬病予防法第5条によって、全ての犬の飼い主は年1回予防注射させることが義務付けられているからです。
怠った場合には20万円以下の罰金となる可能性もありますから、必ず自治体の集団予防接種またはかかりつけの動物病院にて受けさせるようお願いいたします。

【飼い主の義務】

(1) 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
(2) 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
(3) 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること

【参考:西宮市済票と鑑札】

狂犬病予防接種を安くすませる方法

ただ、毎年受けるとなると費用が気になりますから、できれば安く済ませたいですよね。
結論から言うと、価格はざっくり3,000円前後で、どこもそう大きく変わりません。
つまり、安く済ませる方法はないということになります。

そもそも、狂犬病とは?

まず、現在、日本国内では1957年を最後に狂犬病は発生しておりません。
狂犬病の発生がない国は、日本の他に、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドだけです。
狂犬病は犬だけの病気と思われている方もいることでしょう。
実は、狂犬病はすべての哺乳類に感染するとされています。
もちろん、人間にも感染します。
狂犬病に感染する原因は、狂犬病に感染した動物に噛まれることです。
狂犬病に感染し発病すれば、人も動物もほぼ100%の確率で死亡するとされています。

狂犬病の感染源

狂犬病の主な感染源となる動物としては、犬、猫、キツネ、コウモリ、アライグマ、スカンクなどが有名です。
日本では考えられませんが、アジア諸国では犬と猫が主な感染源となっています。
そのため、近隣諸国では、まだまだ狂犬病が蔓延している国があるのが現状です。
そして、狂犬病で年間数万人の人が亡くなっています。

人が狂犬病にかかるとどうなる?

人が狂犬病を発症すると始めは、体がだるい、筋肉痛、倦怠感、頭痛、発熱など風邪のような症状がでます。
病態が進むと、興奮、不安、幻覚、攻撃、錯乱などの精神状態の異常が現れます。
水や風に対して、恐怖を感じる「恐水症」、「恐風症」の症状も引き起こされます。
その後、昏睡状態に陥り、徐々に自発呼吸ができなくなり、最後には呼吸が停止し死亡します。
ほぼ100%の確率で死亡します。

何故日本は、狂犬病の発生がなくなったのか?

国民みんなが狂犬病の恐ろしさを認識し、そして愛犬に狂犬病予防注射を接種した結果、狂犬病を根絶できました。
重要なのは、一人一人がこの病気を理解し、「みんな」で予防注射を実施したからできたことです。
根絶させるには、「みんな」の協力が必要であるということです。
「みんな」の気持ちが緩むと、また、狂犬病の恐怖におびえる日が来るかもしれません。
国内での狂犬病の根絶、再燃防止のため、1950年に法律で狂犬病予防注射が義務付けられました。
繰り返しになりますが、狂犬病予防法により、生後3か月以降のすべての犬に対し、年に1回の狂犬病予防注射が義務付けられています。

犬にとって狂犬病とは

感染すると助かる見込みは、限りなくゼロに近い、怖い病気であることです。
感染経路しては、狂犬病のウイルスを保有している動物に噛まれることで、傷口から唾液中の狂犬病ウイルスが体内に侵入することにより感染が成立します。
発病までの潜伏期間が1~6週間です。
潜伏期間は、無症状ですが発病すると、「狂犬病」と書いて字のごとく狂ったように狂暴化します。
症状には狂騒型と麻痺型の2つのタイプがあります。
狂騒型は、徘徊や隅に行ったまま動かないなどの異常行動に始まり、その後、興奮状態に陥り、そして攻撃的になり、見境なく周囲の物に嚙みついてきます。
麻痺型は、後肢から始まった麻痺が前肢に波及し、全身に広がります。
どちらにしても、最終的には昏睡状態になった後、死に至ります。
発病から死亡するまでの間、犬にとっては非常に苦しい状態が続きます。そして絶命していきます。
また、検査に関しては、生きている時に検査して診断することは今のところできません。
死後、解剖して脳のウイルスの検出をして初めて診断できます。

仮に診断できても、有効な治療法は、現在ありません。
犬が狂犬病を発病すると、1週間程度で命が絶えます。
その間に狂犬病を拡大させないように、疑わしい症状があれば、安楽死の対象となります。
人間の場合、疑いのある場合は、暴露後ワクチンの接種を複数回することで発病を抑えることができますが犬に対しては、そのような治療法はありません。
しかし、治療法はありませんが、幸いにも予防することはできます
人間における狂犬病予防対策は、海外渡航される前に狂犬病予防ワクチンを接種する、および海外では不用意に動物に触ったりしないことです。
人間の狂犬病予防ワクチンの費用は、1回15,000円程度。
犬における狂犬病予防対策は、年に1回、狂犬病予防注射を受けることです。
各自治体が行う集合注射や動物病院で接種することができます。

最後に

これまでの内容から狂犬病が非常に恐ろしい病気であることが十二分に伝わったことと思います。
日本国内で狂犬病に感染する可能性は極めて低いですが、動物の密輸などでいつ国内にこの病気が入ってきても不思議ではありません。
狂犬病は、感染した犬や人間が発症した場合、致死率がほぼ100%の恐ろしい病気です。

飼い主さんは、大切な愛犬や家族を守るためにも、愛犬への狂犬病予防接種は必ずやりましょう。
さらに大きく考えれば、人類を守るためにも。

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