【猫の便秘Ⅰ】自宅でできる猫の便秘チェック法【獣医師解説】

猫も人間のように便秘になることがあります。
便秘とは、何らかの原因で腸内に便が溜まり、適切に排出されない状態のことをいいます。
特に、猫は便秘をしやすい動物だといわれ、便秘になること自体は珍しいことではありません。
では、なぜ、猫は便秘になりやすのか?

様々な原因がありますが、「水をあまり飲まない」「毛づくろいをする」「ストレスに敏感」など猫特有の性質も関係しているといわれています。
そして、猫の便秘に関して、よく耳にするのが、「何日、便が出なかったら便秘なの?」です。
答えは、「3日」です。しかし、あくまで目安です。
猫の場合、食べたものが便として体外に出されるまでには、通常1〜3日かかると言われているからです。
つまり、3日以上排便がなければ、便秘の疑いがあると判断してもいいでしょう。
もちろん、猫にも個体差がありますので、絶対とはいえませんが・・・。

ということで猫の便秘について2回にわたって書いていきます。

とりあえず今回は便秘チェック編として原因にフォーカスして説明していきます。

●猫の便秘の原因

猫特有の性質が関係・・・
水をあまり飲まない。

祖先が砂漠で生活していた猫は、元来、水をあまり飲まない動物です。
そのうえ、水が新鮮でなかったり、器が気に入らなかったりするだけでも水を飲まなくなるため、猫は、水分が不足しがちになりやすく、その結果、便は硬くなり、便秘になりやすい傾向にあります。

ストレスに敏感

猫は、きれい好きで、環境の変化に敏感な動物です。
トイレの場所が変わったり、おしっこやウンチなどの汚れが残っていたりするだけでもストレスを感じ、排便を我慢してしまうことが少なくありません。
排便を我慢し続けると、腸内に便が詰まっていき、さらに、この状態が続くと便秘を引き起してしまいます。
また、以下のようなストレスが慢性的に続くと、自律神経のバランスが乱れて、腸の動きも悪くなり、その結果、排便のリズムが崩れ、便秘になる場合があります。

  • 引っ越し
  • 新しい家族やペット
  • トイレの環境の変更。
  • トイレが不衛生。
  • 工事など外の騒音。
  • 野良猫の存在。
  • 同居猫との不仲。
毛づくろいを頻繁に行う。

きれい好きな猫は、自分の体を舐めて、汚れやニオイを取り除く、グルーミングという毛づくろいを行います。
その際、抜けた毛を飲み込んでしまうことがあります。
大抵の猫は、飲み込んでしまって毛は、口から吐き出します。
しかし、多量に毛を飲み込んでしまう、あるいは毛を吐き出さずにいると胃の中で毛球(毛のかたまり)になってしまいます。
そのまま毛球が胃から腸を通り肛門から排泄されれば問題ないですが、毛球が胃や腸を閉塞(つまる)した場合、通過障害を引き起こす原因となります。
また、飲み込んでしまった毛は、便と混ざり、硬い便塊(ウンチのかたまり)を形成します。その結果、排泄困難となるケースもあります。

室内飼いが関係・・・
運動不足

現在、飼われている猫のほとんどは、安全面を考慮し、室内で飼われています。
しかし、その反面、室内で生活している猫は、外と家を自由に行き来して生活しいている猫に比べて、運動量は不足しがちです。
運動量の低下は、便を肛門へと押し出すための腸の蠕動運動(「ぜんどううんどう」腸がうんちを出そうと腸の壁を広げたり小さくしたりする動き)の低下につながり、便秘を引き起こします。

高齢が関係・・・
腸の蠕動運動の低下

加齢に伴って、徐々に腸の機能が低下していきます。
その結果、便を肛門へと押し出すための腸の蠕動運動が弱まり、便秘につながってしまうことがあります。

病気が関係・・・
腸の病気

大腸や直腸の管腔内に腫瘍やポリープなどの新生物(通常とは異なる成長をした細胞。)ができると、便通を遮ってしまい、そのため、腸内に便が停滞し便秘を引き起こしてしまいます。

肛門の病気

肛門周囲の炎症や腫瘍などによる痛みや腫れが原因で、排便が困難になってしまうケースがあります。
また、直腸が反転し、腸の一部が肛門から脱出してしまう脱肛も便秘の原因になることがあります。
この場合、腸管腔が狭窄する(腸の内側が狭くなってしまう)ため、排便がしづらくなり、その結果、便秘になってしまいます。

骨や神経の病気

腸ではなく、骨や神経の異常で便秘になることもあります。
四肢や骨盤を骨折すると、排便時に力が入らないため力むことができなくなったり、また強い痛みが生じるためトイレを我慢したりします。その結果、便秘に陥ることがあります。
さらに、骨盤骨折の場合、骨折のため骨盤腔が狭くなることが原因で、しばしば便秘になってしまうこともあります。
椎間板疾患などの脊髄疾患による神経麻痺から、排便障害が起きる場合もあります。

薬が関係・・・
副作用

利尿剤(おしっこを出す薬)や抗生物質、鎮痛剤、止瀉剤(下痢止め)、抗がん剤などを服用すると、その副作用で排便に支障をきたす場合があります。
たとえば、利尿剤です。利尿剤は体内から水分を引っ張り出し、尿として水分を体外に排泄させる作用があります。
体内から水分を引っ張り出すということは、便に含まれる水分も奪い、体外に排泄させることになります。
そのため、当然、水分を奪われた便は硬くなってしまい、その結果、排便しにくくなって便秘になることがあります。
また、下痢を治す止瀉剤も過剰に、あるいは長期に服用すると、逆に便秘を引き起こすことがあります。

●便秘になっている可能性が考えられる4つの症状

1.排便しようと力んでいるのに便が出ない。

トイレで排便しようと力んでいる様子が見られるものの便が出ない場合は、便が硬くなってしまっている可能性が高いです。
そのため、トイレに入ったままなかなか出てこないこともあります。
また、力んだ際に、痛みを感じ、排便時に苦しそうな鳴き声をあげる場合があります。
その後、呼吸が荒く、ぐったりと疲れているという場合も、便秘の可能性が高いです。

2.トイレの回数が多く、便の切れが悪い。

1日に何回もトイレに行き、排便をするものの、便自体は硬く小さく、1回の量が少ない場合や、便の切れが悪い場合も便秘の可能性があります。
これは、一回でスッキリと排便できず、腸内に便が残っているため、何回もトイレに行っていると考えられます。
また、便秘になると、便の切れも悪くなり、肛門付近に不快感や違和感が生じるため、おしりを地面に擦りつけながら歩く行動が見られることもあります。

3.3日以上排便がない。

排便の頻度や量には個体差がありますが、一般的に「3日以上排便がない」場合は、便秘の可能性が高いと考えられます。

4.乾燥し、コロコロとした硬い便が何日も出る。

腸内に便が滞ると、便に含まれている水分が腸に吸収され続けるため、乾燥した硬い便が出るようになります。
この状態が何日も続く場合は、便秘の可能性が高いでしょう。

●猫の便秘と嘔吐

便秘の猫には、しばしば嘔吐がみられます。
この場合の多くは、腸内に溜まっている硬い便を力んで出そうとする時、お腹に力がはいり、それに伴って嘔吐してしまいます。

●自宅でチェック!便の状態や排便時の様子から、便秘かどうかを確認

便の量と形状

便の量や硬さを確認します。
便秘になると、普段の便に比べ、便の量が少なく、そして硬くなります。

便の匂い

便秘の場合、普段の便に比べて匂いが強く臭くなります。

異物の混入

便に毛が混じっていたり、布や紙などの異物が混じっていたりすると、便が硬くなり、排泄が困難になる場合があります。

排便時の様子

普段に比べて、トイレの時間が長い(排便されるまでの時間がかかる)、排便時、力んでいる割には便が出ない、排便姿勢をとりながら痛みを訴えて苦しそうに鳴くなどの排便行動に変化がみられます。

●猫が便秘だと触ってわかる?

猫の下腹部を触って、ゴロゴロとした硬い便の感触があるときは、便秘が疑われます。
下腹部を触られるのを嫌がる場合は、無理せず、排便行動や便の状態を観察しましょう。

  • トイレいる時間が長く、排便しようとずっと力んでいるが、便が出ない。
  • トイレに行く回数が多い割には、1回に出る便の量は少なく、また排泄された便は硬くコロコロしている。
  • コロコロとした小さく硬い便の排泄が何日も続く。
  • 3日以上排便がない。

以上のような症状があれば便秘の可能性が高いでしょう。
毎日、快便だったのに、急に排便が3日以上ない場合や、辛そう、元気がないなどの場合はすぐに動物病院を受診しましょう。

※お腹を触る際、便を確認しようと力いっぱい押すと危険です。優しく押してください。

猫の便秘は様々な原因がある

猫ちゃんの便秘は前述の通り様々な原因があります。

もちろん、便秘に気づいた際は動物病院に行くのが好ましいのですが、中々難しいケースもあるでしょうから次回は自宅でできる処置と、また動物病院に行った場合の費用面などもご案内していきます。