FIP(猫伝染性腹膜炎)について、改めて【4】
この記事まとめ
- FIPになってしまったら…食事をしっかりとり免疫UPを!
- ストレスも与えないように。食事とストレスに注意することは予防にも。
- 多頭飼育の場合は感染に注意
- やはり室内飼育、予防が肝心
- 少しずつ、明確な治療法確立に向け研究が進んでいる。
先日に引き続きFIPについて、今回で最終です。
もし猫伝染性腹膜炎(FIP)だという診断が下ったら…ご自宅ではどうしていけばよいでしょうか。
一番大事なのは食事です。
感染が判明した時点ではおそらく元気いっぱいという訳ではないでしょうし、食欲がないなら、食べさせてください。
食べないと、どんどん死に向かっていきます。
お皿に食餌を入れるだけという行為は、食餌を与えたということで、食べさせたということにはなりません。
しっかり食べさせることが肝になってきます。
食べて、体力を回復させ、免疫を上げましょう。
でも、食べたくない猫に、どうやって食べさせたらいいのか?
無理にやるとストレスになってしまって、逆効果です。
どんどん考えて、試行錯誤してください。
・好きなものを与えてみる。
・温めてみる。
・においをつけてみる。
・猫の鼻先にちょこっとだけ、食餌をつけてみる。
・ペースト状、スープ状など食餌の形状を変えてみる。
・水を飲むなら、そこに混ぜてみる。その場合、水は水で別容器で用意しておくこと。
などなど。これは他の病気で食欲がない時も応用できます。
また、多頭飼育の場合は、
他の猫へ感染しないように、環境を区別して、接触を避けるようにしましょう。
人を介して感染することもありますので、手指の消毒をしてから、次の作業をしてください。
失敗すると、家中に感染が蔓延してしまうかもしれません。
では、そもそもこの猫伝染性腹膜炎(FIP)にならないようにするために、
飼主さんにできることは。
ここで、もう一度、このFIPウイルスの特性を思い出しましょう。
猫腸ウイルス(FCoV)が何らかのきっかけで、
突如、変異して猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に変わってしまいます。
この「何らかのきっかけ」とは何かです。
それは、
・ストレスによる免疫力の低下
・遺伝
・年齢
などです。
この中で、遺伝と年齢はどうしようもありません。
でも、ストレスの回避は、飼主さんにでもできるはず。
また、免疫を上げることもできます。
免疫を上げるには、
・毎日、栄養バランスのとれた食餌をしっかり食べさせること。
・しっかり、寝かすこと。
・適度な運動をさせること。
・寒さ、暑さ対策をすること。
・猫カゼ(猫ウイルス性鼻気管炎)にかからないようにすること。
・病気をならないようにすること。
・予防ワクチンを接種すること。
など日常のことですね。
ストレスを回避するには、
・多すぎる多頭飼育は止めること。
・相性が合わない猫と同居の場合は、区画割で生活させること。
・不衛生な環境を改善すること。
・嫌がることはしないこと。
・新鮮な水を常に用意すること。
・トイレはいつもきれいにしておくこと。
予防ワクチン接種をすることの必要性は、
感染症にかからない、かかりづらくすることです。
感染症にかかると、免疫力が下がります。
予防できるものは、徹底的に予防しましょうね。
猫カゼを予防するには、
猫3種混合ワクチン(猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎、猫汎白血球減少症の予防)が有効です。
猫白血病ウイルス感染症を予防するには、猫白血病ウイルス感染症のワクチンが有効です。
じゃあ、猫伝染性腹膜炎も予防ワクチン接種すればいいじゃないか、
と思われるかもしれませんが、
猫伝染性腹膜炎の予防ワクチンは、現在ないんです。
ここで、もう一度、言いますね。
なぜ、予防ワクチンが重要かといいますと、
感染症にかかると、免疫力が下がるんです。
下がると、猫伝染性腹膜炎の発症の要因になってしまうんです。
特に、猫エイズウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症の病気になると
免疫力がグッと衰えます。
幸いにも、猫白血病ウイルス感染症には、予防ワクチンがありますが、
猫エイズウイルス感染症には、予防ワクチンがありません。
そうしたら、猫エイズウイルス感染症はどうやって防げばいいんですか? ですね。
猫エイズウイルスは、ほとんどが屋外の猫たちが持っています。
それらの猫たちと接触すると、感染する可能性がでてきます。
つまり、、、、それらの猫との接触機会をなくせばいいんです。
もう、お分かりとは思いますが、
・屋外に絶対に出さない。完全屋内飼いにする。
・メス猫で、発情のため外へ出たがるようなら、避妊手術をする。
・オス猫で、ケンカ早いのなら、去勢手術する。
余談です。
新型コロナウイルスと猫腸コロナウイルスは同じ?
答えは、同じコロナウイルスの仲間ですが、違うものです。
属が違います。
難しい話になりますが、
新型コロナウイルスは、β属のウイルスで、人に対して健康被害を生じさせます。
猫腸コロナウイルスは、α属のウイルスで、動物に対して健康被害を生じさせます。
また、猫腸コロナウイルスや猫伝染性腹膜炎ウイルスは人に感染した事例は
ありませんので安心してください。
しかし、新型コロナウイルスがネコ科の動物に感染した報告はあります。
人からネコ科動物への感染が確認されています。
感染したら、呼吸器症状はみられますが、
一般的には、軽度で重症化することは、ほとんどありません。
最後に、
体内に入ってしまった猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)の治療薬として国内で承認されているものは
今のところありませんが、研究ではFIPVの増殖を抑える作用のある物質が確認されています。
この先、研究が進めば、発症を抑えて、命を落とさなくて済む時代が来るでしょう。